売掛金や貸付金、未払いの家賃などのさまざまな債権を回収するためには「時効」を常に意識しておくべきです。
時効期間が過ぎてしまったら、どんなに大きな金額の債権も0円の価値となってしまう可能性が高まるからです。
時効の完成を防ぐには「中断」させる必要があります。
今回は、時効の中断によって時効期間を延ばす方法について解説します。
1.時効の中断方法について
時効の中断とは、時効期間の進行を止めて、当初の期間に巻き戻すことです。
債権を行使せずにある程度の時間が経過していても、時効を中断させるとそのときからまた同じだけの時効期間が経過しない限り、時効が完成しません。
中断を繰り返していれば、除斥期間にかからない限り、延々と時効を延長し続けることが可能です。
現行の民法における時効中断方法は、以下の3種類です。
債務承認
債務者本人が「債務があります」と認めることです。この方法で時効を中断させるときには、必ず債務承認の書面を入れさせましょう。口頭による承認だけでは後になって「承認していない」と言われる可能性があるためです。
請求
請求とは、訴訟提起や調停、支払督促や少額訴訟などの裁判上の請求です。これらの申し立てがあったときから時効が中断します。ただし調停が不成立となった場合には、不成立の後か月以内に訴訟を申し立てる必要があります。
仮差押、仮処分、差押
これらの手続きをとった場合にも時効が中断します。
2.時効の停止について
現行の民法には「時効の停止」という方法も認められています。これは、すぐに訴訟を起こすことができないときに、とりあえず内容証明郵便を使って催告しておくことにより、時効を半年間のみ延ばせる方法です。延長された半年の間に訴訟を起こせば、確定的に時効を中断させることができます。
3.改正民法の場合
以上が現行民法における時効中断制度の説明ですが、実は今後、民法が改正されて、時効制度も変更されることが予定されています。
中断や停止という概念はなくなり、「更新」や「完成猶予」という呼び名に変更されます。
ただ、債務者による債務承認や訴訟、差押えなどの事由によって時効の進行が止まるという基本的な枠組みに変更はありません。内容証明郵便による催告の方法も残ります。
大きく変わるのは、当事者の協議によって時効の完成猶予ができるようになる点です。
債権者と債務者が協議をして書面によって時効の延長を約束すると、1年間時効の完成が猶予されることとなります。
債権の時効が成立すると、一切請求できなくなるので債権者は多大な不利益を受けます。そのようなことのないよう、早めに弁護士までご相談ください。